Awesome City Club – 勿忘
Awesome City Club「勿忘」は、ミドルテンポの落ち着いたグルーヴと、透明感のある歌声が重なり、聴く人の記憶をやさしく揺らす楽曲です。派手な展開で煽るのではなく、メロディの流れと歌詞の余白で感情を深めていく構成が特徴。タイトルが示す“忘れない”という意志は、未練や後悔だけでなく、経験を抱えたまま前へ進む静かな強さとして描かれます。ダンスでは、呼吸のコントロール、止めの精度、重心移動の丁寧さがそのまま表現力に直結し、コンテンポラリーJAZZの質感を最も美しく見せられるタイプの一曲です。

Awesome City Clubは、東京を拠点に活動してきた男女混成のバンドで、シティポップやソウル、R&B、ロックなどを横断する洗練されたサウンドメイクと、都会的で生活に寄り添う歌詞世界で支持を広げてきました。楽曲ごとに色合いを変えながらも、メロディの良さと“日常の感情”を切り取る視点が一貫しており、幅広い層に届くポップネスを持っています。「勿忘」でもその魅力は健在で、過剰にドラマ化しない語り口が、かえって聴き手自身の物語を重ねやすくしています。ダンス作品に用いると、音の洗練と感情のリアリティが共存し、振付の解釈次第でソロから群舞まで多彩に展開できるアーティストです。
LESSONこの曲が体験できるレッスン
予約可能な「Awesome City Club – 勿忘」ダンス体験レッスンがございません。
TEACHER'S MESSAGE講師からのメッセージ
「勿忘」が響かせる“記憶”と“今”の距離感
Awesome City Club「勿忘(わすれな)」は、過去を美化しすぎず、かといって切り捨てもせず、胸の奥に残る温度をそのまま抱えて進もうとする歌です。柔らかいサウンドと誠実な言葉選びが、聴き手の個人的な記憶を呼び起こしながらも、どこか客観的な視点で“今の自分”を見つめさせます。タイトルの「勿忘」が示す通り、忘れたくないのは出来事そのものというより、そこに確かにあった感情の輪郭。メロディの流れは穏やかなのに、心拍だけが少し上がるような緊張感があり、踊りに置き換えると「静」と「動」が同じ画面に共存できる楽曲です。
コンテンポラリーJAZZとの相性:余白を踊り、言葉にならない感情を見せる
コンテンポラリーJAZZは、ジャズの身体性(ライン、アイソレーション、リズムの切れ)と、コンテンポラリーの内省性(呼吸、重心、床との関係、間)を行き来できるジャンルです。「勿忘」はまさにその“行き来”が映える構造で、歌のフレーズが滑らかに続く箇所ではロングラインやスパイラルで余韻を描き、言葉が刺さる瞬間にはアイソレーションや止めで感情の焦点を作れます。特におすすめなのは、胸郭の開閉と視線の使い分け。胸を開く=過去を受け入れる、閉じる=言えなかった想いを抱える、といった解釈を身体に落とし込むことで、ストーリーを説明しすぎない“詩的な説得力”が生まれます。
振付のヒント:ミドルテンポを「呼吸」で割り、重心でドラマを作る
この曲で難しいのは、速さで押し切れない分、動きの理由が見えやすいことです。だからこそ、カウントより先に呼吸を設計するのが効果的。例えばAメロは呼吸を浅くして足裏の接地を丁寧に見せ、サビに向かって息を深くしながら上体の可動域を広げる。移動は大きくしすぎず、重心の置き場所を変えるだけで距離感を表現できます。床を使うなら、落ちる動きは“絶望”ではなく“受容”として扱うと曲の温度に合います。上がる動きも跳ぶのではなく、背骨を積み上げて立ち上がることで、静かな決意が立ち上がるような印象になります。
作品としての見せ方:デュオでもソロでも成立する「記憶の対話」
「勿忘」はソロで内面を掘るのはもちろん、デュオや群舞でも強いです。デュオなら“過去の自分”と“今の自分”として同じモチーフを時間差で踊ると、記憶の反復や未完の対話が生まれます。群舞なら、全員で同じフレーズを揃えるより、同じ質感(呼吸の深さ、重心の低さ、視線の方向)だけを共有し、動きは少しずつ変えると「それぞれの勿忘」が立ち上がります。照明や衣装は過度にドラマチックにせず、陰影が出る程度に抑えると、曲の“静かな強さ”が際立ちます。
プラスカルチャーで踊るなら:感情の輪郭を磨く練習曲として
この楽曲は、テクニックを誇示するよりも、身体のどこに感情を宿すかを学べる練習曲です。コンテンポラリーJAZZの基礎であるプリエや軸の取り方、腕のライン、アイソレーションを、物語のために使う感覚が養われます。振付を覚えるだけで終わらせず、歌詞の一行ごとに「視線」「呼吸」「重心」を1つ決めて踊ってみると、同じ動きでも説得力が変わるはず。忘れたくないものを、言葉ではなく身体で残す——「勿忘」は、その挑戦に静かに火を灯してくれる一曲です。